Production note プロダクションノート
満を持しての映画化。企画のスタートは2017年
『BLUE GIANT』の映画化企画が具体的にスタートしたのは2017年。正式にスタートする前に立川譲監督、角木卓哉プロデューサー、武井克弘プロデューサーの3人でどうすればこの素晴らしい原作が映像作品として成立するかを徹底的に議論し、その上で、かねてよりやりとりを重ねていた原作サイドに同年12月に正式に打診。その後、原作のstory directorであるNUMBER8が脚本を担当することが決まり、脚本作業がスタートしたのが2018年夏。そこから2年余りをかけて脚本開発が行われた。
「映画」へのこだわり
「映画」にこだわったのは原作者の石塚真一。実際のジャズのライブのように大音量で、熱く激しいプレイを体感してもらえる場所は映画館しかない、との考えに基づいたものだ。原作の各エピソードが魅力的なことから、当初は「TVシリーズのほうが向いているのではないか?」と考えていた立川監督も、その理由を聞いて納得したという。
一流ミュージシャンが音で演じるJASSの演奏
大のサックスの担当者は、国内外の有力奏者を集めたオーディションで決められた。そこで満場一致で選ばれたのが、サックス奏者の馬場智章。「オーディションのときの馬場さんは艶っぽくて、大人っぽい音でした。でも大を演じるときは、100%の力を毎回出しているような、突っ走っている感じで演奏してもらいました。馬場さんもお芝居をしているような感覚で演奏していたと思います」(立川監督)。録音のときは、音楽のディレクションを担当した上原ひろみから「もうちょっと下手に」「大ちゃんぽくない」と、馬場が上手すぎてダメ出しされることもあったという。雪祈の演奏を担当する上原自身も、ティーンの雪祈らしい演奏を追求し挑んだ。また、玉田のドラムには、多くの人気アーティストからオファーを受け、幅広いジャンルでドラマーとして活躍している石若駿を、上原が指名。ドラム初心者からのスタートとなる玉田の音を、スティックの持ち方にもこだわるなどして繊細に表現している。
ライブ・シーンをいかに魅力的に表現するか
本作は全編の約4分の1程度をライブ・シーンが占める。楽器演奏は、アニメーションで表現するのが難しいもののひとつだけに「制作を預かる側としては、恐怖しかなかったですね(笑)」(NUT・角木卓哉プロデューサー)。
ライブ・シーンの難しいポイントは2つある。ひとつは「歌詞がなく、数分間にわたる楽器演奏シーンを、ジャズに興味のないお客さんにいかに飽きずに見てもらえるものにするか」という見せ方の問題。もうひとつは「ミュージシャンの演奏する様子などをいかにリアリティをもって描くか」というアニメーション技術の問題。
この2つの難問をクリアするために、“JASS”の楽曲をレコーディングする際に参考用の動画の撮影が行われただけでなく、モーションキャプチャーの動きを3DCGに反映したものを使うなど、各カットごとに適した様々な方法でライブ・シーンは制作された。またアニメーターに演奏のイメージを伝えるために、様々なジャズの演奏風景も参考として使われたという。
キャスティング
アフレコは大役の山田裕貴、雪祈役の間宮祥太朗、玉田役の岡山天音の3人が揃い、数日にわたって行われた。
「上原さんが大のことを“大ちゃん”って呼ぶんですが、大ってかわいらしいところがあって、山田さんがそこをうまく表現してくださったと思います。間宮さんは、収録していくうちにだんだんと打ち解けていく様子が雪祈のようだったし、岡山さんはストイックに台本を読み込んできてくださって、そこからして玉田みたいで……。声を聞いた石塚先生とNUMBER 8さんも、イメージにぴったりだねと安心されていました」(東宝・武井克弘プロデューサー)。